――確立された標準治療がない希少疾患へ、分子標的薬との併用で挑む
小野薬品工業は2026年6月11日、抗PD-1抗体のがん免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」について、根治切除不能な甲状腺未分化がんを対象とした国内製造販売承認事項一部変更(適応追加)の承認申請を行ったと発表しました。
今回の申請は、極めて進行が早く予後が不良とされる難治性がんに対し、新たな治療選択肢をもたらすものとして大きな注目を集めています。
■ 背景:標準治療が存在しない「最難治性がん」への挑戦
甲状腺未分化がんは、甲状腺がん全体の数パーセント未満と非常に稀な疾患です。しかし、その進行スピードはがん腫全体の中でも最悪の部類に属し、診断された時点で根治切除が不可能なケースも少なくありません。
現時点で世界的に確立された標準治療が存在せず、医療現場からは新たな治療法の開発が強く切望されていました。こうした深刻な医療ニーズを背景に、厚生労働省は2026年5月18日、同疾患を対象とした「希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)」にオプジーボを指定していました。
■ 治験結果:分子標的薬「レンビマ」との併用で効果を発揮
今回の承認申請の土台となったのは、国内の医師主導によって実施された多施設共同非盲検非対照第2相臨床試験(NAVIGATION試験)の成果です。
同試験では、根治切除不能な甲状腺未分化がんの患者に対し、オプジーボ(2週間間隔)と、マルチキナーゼ阻害薬である分子標的薬「レンビマ(一般名:レンバチニブ)」を併用投与。主要評価項目である「奏効率(腫瘍が縮小した割合)」において、あらかじめ設定された基準を満たす良好な結果を達成しました。また、安全性プロファイルについても十分に管理可能な範囲であることが確認されています。
■ がん治療をリードし続けるオプジーボの歩み
オプジーボは、がん細胞が免疫細胞(T細胞)にかけるブレーキを解除し、人間が本来持つ免疫力を再活性化させてがんを攻撃する画期的な治療薬です。
日本では2014年9月に悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として世界に先駆けて発売されて以降、非小細胞肺がん、腎細胞がん、胃がん、食道がんなど、幅広いがん腫で次々と適応を拡大し、がん治療のパラダイムシフトを起こしてきました。
今回の申請が承認されれば、治療の選択肢が極めて限られていた甲状腺未分化がんの患者やその家族にとって、大きな希望の光となることは間違いありません。今後の審査の動向に期待が高まります。